中村登監督 1.≪紀ノ川≫2。≪古都≫中村登監督作品1.≪紀ノ川≫ 2.≪古都≫ ーーーーーーーーーーーーーー 1.≪紀ノ川≫ ≪紀ノ川≫行く河の流れは、絶えずして、しかももとの水にあらず.... 明治、大正、昭和と3代にわたり、紀ノ川のように 強くたくましく、美しく生き抜いたヒロイン 花 と娘文緒 と孫娘華 の物語である。有吉佐和子原作。 女性映画を撮らせて天下一品の中村 登監督作品である。 が、これは女性ものでも、恋愛ものではない。 女性を紀ノ川にたとえ、伝統主義者であった有吉佐和子が ≪家≫というものが家族の柱であった花の時代から、 その≪家≫を否定した考え、行動に生きた娘文緒、 そして孫の 華がまた家 というものの存在に気付くまでの女性の 生き方の縦糸としてしっかりと描いたものである。 紀本花の婚礼は、紀ノ川にその嫁入り道具を 五艘の舟が運ぶ豪華でゆったりとしたものだった。 22歳の花は若くして村長となった旧家の長男敬作へ嫁ぐ。 日露戦争を狭む大きな歴史の中で、花は由緒ある 家 を 守り、紀ノ川の治水に生涯をかける夫を助け、 4人の子を産み、育て、その家というものが 長女 文緒によってことごとく 反発、否定される。 それでも死すまでその生き方への信念は変わることはない。 形は変わっても、変わった形で自分たちの中に脈打っていることを 晩年に悟る娘文緒。 そして孫の華は海外生活を経て、家とは何だろうと 思い始め、無性におばあさんのことが知りたくなり、 自分の中で新しい形の家 というものの重要さを悟る。 とまあーこの3人の女性の生き方である。 女の命のたくましさは、流れ行く水のように、 自然に逆らわない所にある。 川の持つ浸食性は自然に逆らわないからだとある。 自然を支配(男性だと思う)するためにはまず、 自然に従順でなければならない。 ここが大事なところです。 こうした水の力が女の生命力なのだと言いたいのだろう。 つまり、この映画、小説に登場する男性はみんな生命力に 乏しく、花の夫、義弟、長男、文緒の夫、しかりである。 大河は弱い川、支流を集めて大河となる。 大河はまさに花や、文緒や、華であり、支流ー弱い川はまさに この男達そのものなのだ。 花は一見従順で控えめであるが、 その強さは家を守るという使命感であり、その為には弱い夫や義弟 の生命を飲み込んで、たくましく生きる。 それはポジェテイヴということではなく、 あくまでも家を守るという受身の中でのたくましさである。 文緒は大正のモガの典型的タイプであり 戦後のヌーベルバーグのような生き方である。 体制や規制に反発し、旧家というものに反発する。 しかし自分の娘が育って過去を振り返った時に 母の偉大さを認める。 そして、その娘華はその母をも反発して 成長するといった戦後派の娘である。 冒頭に書いたように川はずーっと(女として)絶えず流れーー 受け継がれていくが、 元の水ー(つまり花と文緒と華が違うように)にあらず、 女の形、思想も変わっていく。 外側からみれば女というものに 変わりなく見えるのでしょうが? 母をまた女性を海や川に例えるということは こういうことなのでしょう。 有吉さんが生きてらしたら華の娘世代のその又娘世代を 伝統を重んじる彼女がどういう風に捉えたか? 読むことができたらなーと思わずにはいられません。 ”花”の信念と芯の強さは犬の遠吠えのような”文緒”では 太刀打ちできません。 むしろ、反発したが受け入れて新しいものの中に 伝統をみつけるという華のほうが 文緒より真の意味の強い女性となっっていったし、 だからいまも女性の中に伝統を大事に思う(私もです)女性が しっかりいるのだと思いますね。 そして有吉さんのお嬢さんー青さん?珠緒さん?ーだったかしら? きちんと受け継がれた文章をお書きになっていると思います。 司葉子は22歳から60歳までを演じきり とくに旧家の娘らしい着物姿や歳を召してからの着姿も素敵で、 ああいう風にゆったりと着物がきこなせればいいなあーと 思いました。 単なる大河ドラマとしてではなく、 女性と家の関わり、夫に対して妻がどうあるべきカの お手本にもなるでしょう! 製作 松竹 1965年度作 監督 中村 登 原作 有吉佐和子 出演 花 司 葉子 文緒 岩下志麻 華 有川由紀 敬作 田村高廣 義弟 丹波哲郎 大祖母 東山千栄子 ーーーーーーーーーー 2.≪古都≫ 2.≪古都≫ ≪古都≫ 製作 松竹 1963年 監督 中村 登 出演 岩下志麻(二役)、宮口精二、吉田輝雄 長門裕之 作家 川端康成原作の映画化である。 監督の中村登という人を若い方は殆どご存知ないだろう。 しかし、松竹大船撮影所が最も盛んなころ、 小津や渋谷実、大庭秀雄らと 女性文芸映画に携わった監督として、 私たち世代までは周知している。 主演の岩下志麻はそれまでその美しさは認められていても、 小津の”秋刀魚の味”ではまだ可愛いお嬢さんであった。 そして、”五瓣の椿”、で演技開眼する前の作品で、 22歳という瑞々しく、しっとりした双子の姉妹を演じた。 黒澤の”七人の侍”でニヒルな居合抜きの達人を演じた 宮口精二が、やさしいがお茶屋屋通いの 止まらない父親を演じている。 あら筋 千恵子と苗子の双子 京呉服屋の一人娘として育てられた千恵子は20年前 店の前に置かれていた捨て子であった。 そのことを子供の頃に育ての両親から 知らされていたが、親娘睦まじく平穏に暮らしていた。 ある日 千恵子はいつも行く北山杉の里で杉を磨いている 自分によく似た娘に出会う。 そして、祇園祭の宵宮で千恵子は苗子と偶然再会する。 苗子は自分に双子の妹がいることを知っていたが 千恵子は初めて自分に双子の姉がいることを知った。 千恵子に想いを寄せる店の織り元の息子秀雄は千恵子に 求婚するが、千恵子は断る。 それは、祇園祭の夜千恵子と間違えて声をかけた 織り元の息子秀雄に 苗子が好意を持ったことを知ったためであった。 再び北山の苗子に会いに出かけ、二人は落雷の中 雨宿りをしながら 初めてしっかりと抱き合い、肉親のぬくもりを確かめあう。 両親に苗子のことを告げる千恵子。 両親は苗子が家を出ていくのではと心をいためるが、 いっそ、苗子を家に引き取ろうと思うのであった....が。 と話は続くのであるが、決して派手な映画ではないが、 京の四季をはんなり美しく、 そして数奇な運命の双子の姉妹のお互いを 思いやるやさしい心と それをとりまく人間模様を淡々と描いた作品である。 この作品の紹介は映画の評価は別として、 女性の方たちにぜひ観ていただきたい着物お勉強会の映画です。 京都の老舗の織り元あのー市原亀之助商店ーの着物を たっぷりと見せてくれますよ。 織り元の現場は京都ー渡文ーの協力 そして、あの”龍村美術織物”がちょっと登場します。 苗子は里の娘らしい着物。 千恵子は渋い紬の着物がとっても似合って美しい。 川端文学の香りは...? 変に川端を意識して撮られてはおらず 中村監督の(古都)として観れば それなりに志摩さんと着物で楽しめる映画です。 私は京都のーにおいーと 着物ーしか観なかったような....? ーーー幸せは短くて、淋しさは長いのよね。 しっかり働くと手が温かいわーーーというセリフが哀しく... 着物好きの女性にお薦めの映画です。 明日はお茶のお稽古日 なに着ようかなあー! 年甲斐もなく、千恵子になった気分で おしとやかに参りましょうぞ。 ジャンル別一覧
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